タイル職人が、施工後に見ているもの

タイル職人が施工後に見ているもの。

施工している時には気が付かない、仕上がってからのタイル全体の雰囲気を、職人として確認しています。

割付の時点では正解だと思っていても、家具や物が置かれたり、照明が設置されたりすると、

「こうした方が良かったかもしれない」

なんてことも考えます。

それを次の施工につなげる。

たぶん、これの繰り返しなんだと思います。

職人として楽しみなのは、タイルによって空間の印象がどう変わったのかを、自分の目で見られる時です。

タイル職人が現場の最後まで立ち会うことは、実はそれほど多くありません。

だから、完成した空間を自分の目で見られた時は、少しほっとします。

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600角タイルがつくった、優しい空間

今回のマンションリノベーションでは、LDKの床に600角タイルが使われました。

使用したタイルは、RIVIERAのジェルストーン。

600角という大きさの存在感がありながら、仕上がった空間にはどこか優しい雰囲気があります。

壁面には、ボーダータイルと600角タイルのアクセント。

家具が入り、照明が入り、すべてが仕上がった空間を見た時。

施工中に元請さんから言われた、

「仕上がりが楽しみですね」

という言葉を思い出しました。

完成した空間で見るタイルは、タイル単体で見ていた時とはまったく違って見えます。

床だけでもない。

壁だけでもない。

家具だけでもない。

光だけでもない。

それぞれが重なった時に、初めて「空間」というものを感じられるのだと思います。

だからタイルは、内装の仕上げとして面白い。

人は、ただ住める場所に美しさを求めた

タイルは、

固い。

冷たい。

重い。

そんなイメージを持たれることもあります。

決して扱いやすい材料ではありません。

一度張れば簡単には変えられない。

流行に合わせて、気軽に交換できるものでもありません。

それでも、何千年も前から人は土を焼き、建築に使ってきました。

建物を守るため。

そして、いつしか美しくするために。

私は、この歴史がとても面白いと思っています。

人は雨風を防げる建物をつくったあとも、それだけでは満足しなかった。

そこに色を入れた。

模様を入れた。

焼き物で壁を飾った。

ただ住めればいい場所に、美しさを求めた。

今、私たちがタイルを使う理由も、本質はそれほど変わっていないのかもしれません。

暮らせればいい。

歩ければいい。

壁があればいい。

機能だけを考えれば、それで十分です。

でも、

毎日帰る家を好きになりたい。

人を招いた時、少し誇らしく思いたい。

何年経っても、この空間を選んで良かったと思いたい。

人は空間に、機能以上のものを求めます。

私は、そこにタイルの役割があると思っています。

タイルを張る前に、考えていること

私はタイル職人なので、当然タイルを張ります。

でも、現場で考えている時間は意外と長いです。

どこから張るか。

どこに目地を通すか。

割り切れない寸法を、どこで決め切るか。

柄の強いタイルをどこに置くか。

色の濃い一枚が浮いていないか。

加工したタイルを上に入れるのか、下に入れるのか。

光はどこから当たるのか。

人はどこに立ち、どこを見るのか。

図面には寸法があります。

仕様もあります。

でも、現場でしか見えないものもあります。

そこで気が付いたことを共有し、新しい納まりを考える。

これもまた、繰り返しです。

以前、ダウンライトが当たる壁にガラスタイルを施工した時、加工したタイルを上に入れるか、下に入れるか迷いました。

どちらでも施工はできます。

正直、どちらが絶対に正しいのかは分かりません。

私は下に入れました。

人の目は、光が広がる壁面を見るだろう。

ならば、その場所にはできるだけタイル本来の形を残したい。

そう考えたからです。

完成したあと、その判断に気付く人はほとんどいないと思います。

それでいいと思っています。

「なぜか綺麗に見える」

その「なぜか」の中に、職人の判断が残っていればいい。

近い目と、遠い目

施工中、私は近くからタイルを見ます。

欠けていないか。

目地は揃っているか。

不陸はないか。

加工部分は綺麗に通っているか。

そして、時々離れます。

柄のバランスを見る。

色の偏りを見る。

出角、入角の通りを見る。

空間全体を見る。

近い目は、職人の目。

遠い目は、空間を見る目。

どちらかだけでは足りない。

細部が綺麗でも、空間として違和感があれば美しくない。

空間が格好良くても、近づいた時に仕事が荒ければ、長く美しくは残せない。

だから、近づいて見る。

そして離れて見る。

その繰り返しです。

タイルを張っている。でも、見ているのは空間です

玉寄タイルは、タイル工事会社です。

仕事はタイルを張ることです。

でも、私が見ていたいのはタイルだけではありません。

何年もその場所で暮らした時を想像する。

タイルが空間の中で、どんな存在になるのか。

そこまで想像できる職人でありたいと思っています。

設計した人には、その人なりの意図がある。

その空間を選んだ人には、そこで送りたい暮らしがある。

私たちタイル職人は、その間に立っているのかもしれません。

図面に描かれたものを、現実の空間に変える。

その中で考え、判断し、完成した空間を見て、また次につなげる。

たぶん職人は、その繰り返しです。

タイルを張っている。

でも、見ているのは空間です。

玉寄タイル
玉寄

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